マツシマ

コリアタウン殺人事件のマツシマのレビュー・感想・評価

コリアタウン殺人事件(2020年製作の映画)
2.2
近所のコリアタウンで起こった殺人について調べ始めた男(無職)
カメラ片手に近隣住民へ取材、現場百回で事件現場の家(外観)や路上を撮影しまくり
あまりののめり込み具合に同棲している恋人もドン引きし始める……

いわゆるPOVかつファウンドフッテージものの映画
一応ホラーっぽくはある

無職の男がやることなさ過ぎて近所で起きた事件の解決こそが「我が使命」みたいに思い込んで、トンチキなインタビューを通行人にしまくるヤバい映像盛り沢山
なんて真っ当な無職映画!
暇ってのも考えもんだな……

低予算作成なんて言葉も甘いほどの金のかかってなさで、正直誰でもスマホがあって友達がいれば明日にでも撮れそうな内容ではある
だって9割のシーンで無職がぶつぶつ言ってるだけだから!!!

この手の映画にありがちな
「思わせぶりな雰囲気で引っ張って引っ張って結局何も解決しませーーーーーん具体的なことも分かりませーーーーーん」
的な展開とオチについては、もはや数々の映画体験によりこちら側の調教が完了しており
「キレイなオチがなくても、ラストまで引っ張ってくれる雰囲気」を栄養にすることが可能な肉体になっているので、その点不満はありません!
ヤバい!この肉体!!
でも雰囲気だけでカロリーになる!!!

大低予算(おおていよさん)かつあまりに地味な本作が、それなりに栄養価のある雰囲気を生成出来ている理由はいくつもあると思うけれど
やはりホームレスは外せない!

途中に出てくる「思わせぶり」の擬人化のようなホームレス男性
これがもう凄まじい完成度というか
「ホームレスの人にお金渡してセリフ言ってもらってるのでは???いや絶対そうだ」
と思わざるを得ないほどのホームレスっぷり
この映画の謎の説得力というかリアリティというか、とにかく雰囲気を爆上げしているのは間違いなくこのホームレス

無職とホームレスのアンサンブル、ご堪能あれ

そしてもう1つの大きな要素は、この映画そのものの謎っぷり

なんせスタッフロールも存在しなけりゃ製作者もよく分からない
突然何の説明もなくAmazonPrimeで配信された謎映像なのだ

「この記録を作った人間を探しています」
のテイで作られたファウンドフッテージは数多あれど、その設定を貫き通す作品は超珍しいです
どんなファウンドフッテージ映画にもスタッフロールはあるぞ!

これが意味する個人的な凄まじさは
「この製作者は、映画の不気味さのために名誉欲を放棄している」
点です

だってこれが仮に世界的にめちゃくちゃヒットしても、自分の名前一切出ないんだから!
すごくない?
ちやほや放棄してんじゃん!!!
(まぁ実際そうなったら名乗り出るかも知れんが)

映画のために私を滅する
なかなか出来ることじゃありません

うーーーーん、凄い


あ、凄いけれどそれが映画として「面白い!」とイコールかというと全然そんなことはなくて、めちゃくちゃ退屈だと思う人は全然いるでしょうねという印象

まぁ「変なもん見たいな」という気分の時には良いんじゃないでしょうか

ホームレスはマジで凄いから