てつこてつ

おとなの事情 スマホをのぞいたらのてつこてつのレビュー・感想・評価

2.3
イタリアオリジナル版、韓国リメイク版をそれぞれ観て結構好きな作品だったので、WOWOWで放送されたこちらの日本リメイク版も視聴。

いやいや、これはリメイクではなく、設定だけを借りた大胆過ぎるアレンジ作品。でもって、オリジナル版のイタリアの設定を忠実にアジアを舞台に変えても違和感なく、且つ、より妻たちの心情を上手く書き足した韓国リメイク版のファンとしては、この日本版は改悪としか言いようがない。もちろん、本作しか見ていない方がこの作品をどう捉えるかは分からない。

ジャケ写やキャストのイメージで、てっきり東山紀之が医者役かと思いきや、まさかの元教師役。ダサいセーターや髪形、眼鏡でイメージチェンジ図ろうとしていても、スタイルが良いし顔が整い過ぎてるんで無理があるのが否めない。でもってして主役設定なのがどうなのか?って思っていたら、終盤、まるでキャラが変わったかとのような朗々と大演説を繰り広げる部分で、なるほどね・・と納得。

オリジナル版でも、韓国リメイク版でも、彼が演じるキャラクターが最後に仲間たちに言い放つ台詞が辛辣で、どれだけ長い付き合いでも、誰もが大なり小なり秘密を抱えているし、人間が持つ偏見や悪癖はそう簡単には直せるもんじゃあないという非常にリアルなメッセージに共感できていたので、180度全く異なる絵空事のようなハッピーエンドにしてしまった脚本を手掛けた岡田恵和の罪は大きい。

さりげない仲間内の会話の設定の筈が、何だか舞台じみていて大仰だし、ビッグスター一人一人の見せ場を順番に作っていく作風も古臭い。常磐貴子が中盤で見せる行為なんて、絶対、あり得ないだろ。鈴木保奈美の不倫エピソードも蛇足でしかない。

ストーリーが展開する度に挟み込まれるベタなBGMもうざったい。監督がテレビドラマの現場が長すぎた人物ゆえか、映画作品として見るにはちとチープ。冒頭で一人一人のキャラクターの人物紹介をLineのメッセージ風に見せたり、結婚指輪をピカリと光らせる演出なんて安直過ぎるっしょ。

初っぱなのコンビーフの缶を開けるシーンにどんな意味があるのかと思いきや、意外なこの集まりの人間関係のタネ明かしに繋がるんだけど、こんなところで奇をてらう必要性なんて全く無し。

この作品だけを見てハマらなかった人は、是非とも、シニカルコメディの体裁を取りながらも辛辣なメッセージが明確な、イタリアオリジナル版「おとなの事情」ないしは韓国リメイク版「完璧な他人」を観てもらいたい。ぶっちゃけ、全くの別作品として思ってもらっても良いと言い切れる。
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