KnightsofOdessa

もう終わりにしよう。のKnightsofOdessaのネタバレレビュー・内容・結末

もう終わりにしよう。(2020年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

[死が不可避であると知る人間が発明した希望、それは愛] 100点

ルーシー、ルシール、ルシア、ルイーザ。そう呼ばれる彼女は何者でもないのだが、同時にすべての人間でもある。なぜなら彼女はジェイクの頭の中にいる存在だから。そもそも、人間とは他者との関係性をインプットし、現在を認識するだけの装置であり、視点人物さえ定まれば同様の基本設定を持った他者などいくらでも作り出せる、という認識の問題を掘り下げるとなれば、それが空想であっても現実であっても実は変わらない。この考え方では世界は視点人物の中で完結してしまうが、カウフマンの中では"他者"が存在していると私は思う。ジェイクの頭の中には彼が操るルーシーの他に、観客と同じ目線を持ったカウフマンが操るルーシーが共存していて、後者はジェシー・バックリーの実体を持って画面の中に存在しているからだ。そして、存在しているのに"未分化の概念"である彼女は、ジェイクに操られるまま流動的にその設定(職業から時間まで)を変化させられていく。そして、彼女の存在が未分化の概念であるのは、ジェイク以外の視点人物が今後生み出すかもしれない物語の担い手という普遍的な意味を持っているのだ。なんと希望的なことだろう。

『ドロステのはてで僕ら』に続き、画面上で早瀬耕に再び出会えたことを山口淳太、カウフマン両名に感謝したい。
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