このレビューはネタバレを含みます
さまざまな映画において、感情の間合いや質感を映像の物語につくりあげる、という才能に心から敬意を抱きます。
ドールハウスのようでいて、端々に生活が残した傷がある室内 〜 小雪が舞う街角と赤いコートの女性、立体感の希薄な、それぞれへの光の当たり具合に違和感を抱いたその瞬間からワクワクし、
ふっと差し込まれる、学校内でモップをかける用務員、そのシーンだけ突然に地上の重力を感じ、
私のなかでバランスが整うと、
映画のなかへするりと入っていった。
見たことがら、聞いたことがら、得た知識、喜び、願い、もし…という理想、後悔… 人生に起こった全ての事象から、私だったらそのとき、何がどんなふうに、どんな順番で、どんな自己脚色して、目の前にあらわれるんだろう。
時々、〝死〟が頭に浮かぶと、「考えない考えない!」と、あたまをブンブン振ったり、かきむしってしまうことがある。
でも、ウジ虫に食べられながら無惨な死に方をしたブタが、好きなCMのアニメキャラ(キモカワイイ)ふうな姿で迎えにきてくれるように、
現実の醜さをふんわりくるんで光のほうへ行けるなら、だいじょぶかもしれない。と思った。
ありがとう、映画。