ゆたり

もう終わりにしよう。のゆたりのネタバレレビュー・内容・結末

もう終わりにしよう。(2020年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

うはぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【前半】
なあなあで続けてきた関係に終止符を打ちたい教養のあるちょっと偏屈で彼をどこか見下し気味な彼女と、彼女ほどではないけどこちらも教養のあって実直そうな、でもどん臭さも感じさせる彼。
その、内実終わりかけている関係性を裏付けるような真っ白で厳しい吹雪

「もう終わりにしよう」
あー、なるほどね。 表面的には理解できても深層では決定的に分かり合えない部分のある彼氏と、グズグズの関係を終わりにするってことねーーー。
って、最初は、そんな風に思っていました...

不自然な背後に映る扉、見るからに怪しげな地下室、めっちゃブルンブルンする臭い犬、ジェイクを一瞥もしない父と、なんかやたら挙動不審な母との、違和感のある食卓
トニ・コレットさんこわいよ...

こういう、違和感の置き方が絶妙なのだいすき
登場人物の誰を信用すればいいのか。
それがずっとわからなくて、落ち着かない。

【後半】
「コンプレックスを抱えた孤独な男の精神世界。 そしてその妄想が行き着いた結果」
という受け止め方をしたけど、合ってますかね...

最悪ではないけど良くはない家庭、愛情はあるが過干渉で無知で不理解でデリカシーの無い両親の元で(本当の愛情とはなにかは置いておいて)、才能はないが努力家で、絵も勉強もそれなリできるけど、明確な優秀ではないが故に認められずに育った男が、決して思い通りではなく納得のできない人生を歩んできてしまい、そのフラストレーションを処理するために、己の世界で自問自答を繰り返す。
それでも、もちろん解消されることはなく、何回も何回もループしてループしてぐるぐるぐるぐる考えて、フラストレーションはまるで捨てられたアイスのカップみたいに溜まっていく。
最終的には、キラキラした世界。
本当は自分がいるべき世界(だと思いたい世界)を夢見て、終わる。

という解釈でした。

春の景色にあるブランコと雪に埋もれたブランコ
視覚はイメージに左右される
地下室に押し込んだ、認めたくない清掃員のユニフォーム
必死に描いた抽象画と憧れの写真
コロコロと変わり、どんどん寒色になっていく服装
コロコロと変わる職業と名前
意地悪でかわいいバカにしたような笑い方をするアイス屋の店員と、ロッカーの前で意地悪な笑い方をする生徒
笑われる側の、見た目が良くないアイス屋の店員&ジェイク=清掃員
人物が、確信に迫る思考・質問に差し迫ると都合よくカットインしてくる事象
人物が時折語る、映画を観ている側からすると辻褄の合わない話
登場人物たちが全く触れない多くの違和感
車内で突然顔が映画の人物に変わるカット(こわかった...)
都合が良すぎる都合の悪い展開
老眼鏡のようなものをかけるヒロイン的人物
あの電話はジェイクの比較的落ち着いている理性的なところからだったのかな

「もう終わりにしよう」
うーんつらい
でもつらかったんだもんなーきっと
そっかー...
ぼくは完全に終わりにしたのかな。と思った。

解説読んでたらだいぶ違っていたようだ
でもがんばって考えたもん
いや、そこまで大きく間違ってはないか


結論、だいすきでした
こんなに誰かと共有したい作品はミッドサマー以来だな

隠されたヒントを探す作業が好きな人は好きな作品だと思うけど、逆にそういったことが好きじゃない人にはしんどい映画かもしれない

内容にばかり触れてしまったけど、不快感の乗せ方、色彩と音、見せ方の諸々がめちゃくちゃ素敵
特に部屋の色とライティングでの錯覚を利用して服の色をグラデーション的に切り替えていたのが、なんかすんごいテンション上がった!!!!!!
ゆたり

ゆたり