Jun潤

アジアの天使のJun潤のレビュー・感想・評価

アジアの天使(2021年製作の映画)
3.7
2021.07.07

「茜色に焼かれる」石井裕也監督作品。

韓国で事業をしている兄・透に誘われ、日本の家を引き払って韓国に来た剛・学親子。
適当な態度の透と共に生活を始めるが、透の商売仲間に逃げられ、微かな希望を求めて江原道へ向かう。
アイドルの夢を絶たれ、兄と妹と共に暮らすソル。
彼ら兄妹らも、明日への願いをかけ、親の墓参りへと向かっていた。
偶然知り合った二組の家族による旅が始まる。

これはよいロードムービーでしたね。
行く先々でトラブルに見舞われ、その度に言語の壁にぶち当たっても、日本語、韓国語、時々英語を駆使して足りない部分は身振り手振りで補って、互いに理解しようとしていく様子が、ヤキモキさせつつも分かり合えた時には安心させるような、ハートフルな雰囲気であふれていました。

同じ日に見た「いとみち」と奇しくもリンクしていて、こちらも言語がキーとなっていました。
見ている側には伝わっていなくても作中人物同士はわかり合っていた「いとみち」と違い、作中人物同士は言葉は通じ合っていなくても、「大事なのは相互理解だ」を合言葉にするように、言葉はわからなくても互いに理解し合おうとする様子が表情などから伝わってきました。

「茜色に焼かれる」でも感じたようなキャラでもって世界観を伝えてくる手法は今作でも健在で、
池松壮亮演じる剛はソルに対して言語、国籍の壁を超えてわかり合おうとする様子がヒシヒシと感じ取れましたし、旅の終着点である江原道に希望はなかったとしても、かつて亡くした妻と共に撮影した風景を思い出し、妻を心の中に残しながらも新たな家族を迎え入れようとする希望が感じ取れました。

ソルを演じたチェ・ヒソもまた、最初は言葉も通じずニヤニヤしているだけの透を毛嫌いしていましたが、徐々に打ち解け、天使と出会ったことで運命の人と人生を共にする決意へと至りましたが、二人のやりとりがどこかもどかしく、早く結実してほしいと願いながらも、二人の旅をもっと見せてくれと願わせるほど愛情に溢れた描写に仕上がっていました。

今作で印象的だったのはオダギリジョーですね。
直近で見た作品では序盤で死んでしまっている役ばかりでしたので、終始存在感を放つ役柄に安心しつつ、適当な態度をしていてもなかなか憎めないキャラをしていて、適当なはずなのに核心をついてくるような台詞回しがとてもよかったです。
Jun潤

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