このレビューはネタバレを含みます
忍者の末裔である事を知る女性の話。
冒頭から「移民排斥」や「公文書改竄」といったワードが並ぶので、社会派な映画になるのかと思いきや、主人公が忍者の末裔である事が知らされると。
そこからポンコツな新人忍者の成長物語になっていくので、意外とジャンル映画的な軽さのある作品でしたね。
主人公は大人しくて地味な女性。
そんな脱力系女子が裏家業をやるという意味では、『ベイビーわるきゅーれ』を想起させましたが、あの作品と比べると、忍者回りの描写がちょっと弱い。
吹き矢以外にも忍者らしいアクションを見たかったし、吹き矢に特化するなら、もっと変わった吹き矢の使い方を見せて欲しかったです。
あとは、ヤンキーの親友が良いキャラだっただけに、もっと彼女の出番を増やして欲しかったし、ラストの先輩忍者との対決も、もう少し盛り上がりが欲しいところ。
ここまで政治や社会を風刺するなら、女性差別やミソジニーの問題を入れても面白かったかもしれません。
外国人は差別され、公文書は書き換えられ、自警団が町を監視する…。
「こんなディストピアは嫌だな~」と思わされますが、これらは既に日本で起こっている事で、「あ、私達はもうディストピアの中にいるんだな」と気付いた瞬間にはゾッとさせられました。
自主製作映画という事で、限界を感じる部分もありますが、自主製作だからこそ出来た挑戦や実験もあって。
政治的なテーマや田舎の閉塞感など、入江悠監督の作家性が強く出た作品でもあるので、監督のファンならば、楽しめるんじゃないかなと思います。