緑

おかえり ただいまの緑のレビュー・感想・評価

おかえり ただいま(2020年製作の映画)
2.0
有意義なテーマの映画=いい映画ではない。

見どころは斉藤由貴のヨーヨーと泣き顔、
そして一般作品なのに「例のコンビニ」登場。
以上!

予告編を観て悪い予感がよぎっていたが、
編集の山本哲二の腕を信じて鑑賞。
いやー、ひどかった。
名編集が太刀打ちできる隙がないくらいに
脚本と役者がひどい。

なぜ劇映画の作法をわかっている人に
脚本を書いてもらわないのか。
優秀なドキュメンタリー作家が
優秀な劇作家ではない。
被害者12歳時の魔法の望遠鏡エピにしろ、
31歳時のキス前の流れ星エピにしろ、
実際にあったことかもしれないが
年齢に対してあまりに幼すぎる言動で、
悪い脚本に悪い芝居が乗ってリアリティの欠片もない。

ちゃんと芝居できているのは斉藤由貴と浅田美代子くらい。
大空眞弓は舞台っぽい芝居だった。
言っちゃあなんだが他は子どもも大人も全員棒。
なに? 監督の演技指導は「再現ドラマっぽい芝居」だったの?
それにしても下手だし、
だとしたらドラマパート長すぎ。
優秀なドキュメンタリー作家が
優秀な劇映画監督ではない。
なぜドラマパートは劇映画の監督に依頼しないのか。

個人的にはかなりのおもしろポイントだったが、
「例のコンビニ」と一目でわかるのはどうかと思う。
そういう作品じゃないでしょう。
ちゃんと商品棚に値札付けて、
もっとリアルなセット作りするべきでは。
被害者の子ども時代、
キャベツ切らせる前に手洗いがないのも
ディテールというものを軽んじていると感じた。
なんというか一事が万事、雑。

ドキュメンタリー部分は掘り下げが足りない。
目新しいところは死刑執行後の犯人父のコメントくらい。

被害者母の被害者目線での判決をという
言葉を受けて思ったこと。
司法に求めるべきは、
加害者目線の判決でも被害者目線の判決でもなく、
六法に則った合理的な判決である。
裁く意味があるのかなんて問いは愚だ。

あと、嘆願のための署名集めについて。
署名した人たち全員がちゃんと考えてしているならいい。
被害者遺族の癒しになっただろうし、
事件について、司法について、
その人なりの考えが持てるようになったかもしれない。
弁護士罷免の署名で訴えられた人たちのコメント等を読むと、
その署名にどれほどの意味があるのか疑問。
数さえ集まればそれでいいんですかね。

犯人のひとりが控訴を取り下げて死刑確定した理由は、
判決を受け入れたからだとは思うのだが、
ふと、以前見た安楽死のドキュメンタリーで
群発頭痛が苦しすぎて安楽死した人がいたことも思い出した。

映画の出来はさておいて、
事件被害者にはご冥福を祈るし、
被害者遺族にはお悔やみを申し上げたい。
もうこんな事件は起きて欲しくないという気持ちは同じである。

余談。
上映前に流れたミニシアター・エイド参加者に
原田美枝子、のん、ヤスダスズヒト、
那州雪絵、廣木隆一を発見。
佐藤浩市はあることを知っていた。
高額出したのはどんな人だろうと思っていたが、
企業が多かったようだ。
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