ShinMakita

ショック・ドゥ・フューチャーのShinMakitaのレビュー・感想・評価

2.0
1970年代後半。パリのアパートメントの一室で、アナが曲作りに没頭する。部屋全体を占める大きなシンセ、シーケンサー、リズムマシン。彼女はまだ世間に認知されていない電子音楽の作曲家。でも、依頼されたCM曲は完成せず、プロデューサーは前払いしたギャラを返せとカンカンだ。そんなとき、そのCM曲の女性歌手がバラシになったとは知らず部屋にやってきてしまう。彼女と意気投合したアナは、試しに作った曲に彼女の声を乗せてみるのだが…


「ショック・ドゥ・フューチャー」

以下、ネタバレ・ドゥ・フューチャー。


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若い女の子が朝起きて曲を作って、夜のホームパーティで披露する。たったこれだけのスジなんだけど、「フランス人」「女性」「電子音楽」という枷が旧来の価値観と争うさまをしっかり見せて、青春映画としてちゃんと成立している素晴らしい作品。英語歌詞だからと蔑まれ、女だから仕事ができないと決め付けられ、電子音楽なんか雑音としか捉えられない耳の持ち主には相手にされない。うーむ、ツライね…頑張れアナちゃん、得意のマッサージと白パンツで挽回だ!と応援してしまいました。

さて、電子音楽電子音楽と間抜けに繰り返しておりますが、私ゃ音楽の素養・知識がないものだから、アナが傾倒する音楽ジャンルがわかりません、テクノなのかハウスなのかディスコなのか…違いがわかんないよ(笑)。
というわけで、「シンセを最大活用した耳障りの良い音楽」という勝手な定義で〈テクノポップ〉と呼ばせてもらうと、確かにアナちゃんの曲はすんなり耳に馴染んで素直にカッコイイと言いたくなりますな。音楽知識ゼロでも、ジジイ世代の日本人はテクノポップの洗礼を受けているんですよ。YMOで。

映画音楽的に、テクノポップの挿入歌とテクノサウンドトラックを作った第一人者といえば、ジョルジオ・モロダー以外にいないでしょう。モロダーといえば思い出深く、初めて手に入れた洋楽LPが「メトロポリス」でして、その次が「スカーフェイス」のサントラLPでございました。今やトップガンのベルリンもフラッシュダンスのテーマもダサい曲認定でしょうが、スカーフェイスのインスト曲は低音の不気味な響きが最高で、モロダーのテクノサウンドじゃなければ絶対ダメなイメージです。このモロダーのパクリというかヨーロッパ版というか、そんな存在のセローンの代表曲「super nature」がこの映画のド頭でフィーチャーされてるということで、やはり俺との親和性は高いなと思った次第。

さらに余談…TVドラマで初めてテクノサウンドをモノにしたのはヤン・ハマーだと思うのは俺だけでしょうか。マイアミ・バイスですよ。局の意向を無視して、マイケル・マンの鶴の一声で起用が決まったハマーさん、自室で1人で、あの素晴らしいテーマと劇伴を作っていたとは驚異的ですよね。


…てなわけで、全くの門外漢でもきちんとノレるテクノサウンド。これを劇場で浴びるように聴ける本作は、やはり観る価値ありの一本と言えるでしょう。オススメです。あ、あとホドロフスキーの孫、超可愛い❤️
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