大島育宙

そこにいた男の大島育宙のレビュー・感想・評価

そこにいた男(2020年製作の映画)
4.0
『さがす』きっかけで知り初鑑賞。

新宿ホスト殺人未遂事件のセンセーショナルな写真に触発されて作られたらしいが、犯行の場面自体の他は設定から何から大幅に改変されている。

事件のホストの人は生還して復帰しているし、劇中ではホストではなく若手俳優。
犯人の女性の職業もガールズバー店長からテレビドラマの制作進行スタッフに変更されている。

どこからどこまでが誰の功績かわからないが、
岨手由貴子さんの脚本(脚色、と言いたい)が無駄なく美しいと思った。

男を巡る2人の女性が、正面から対立するのではなくある意味では同じ方向を向く辺り、そのまま『あのこは貴族』の構図ではないか、と驚いた。
肩透かし的な価値転倒のこのシーンがなければ、ともすれば典型的な狂恋物に堕していたかもしれないと思う。

男が女にマッサージをさせているシーンで流れている映画は阿部定の映画だろうか?(『愛のコリーダ』ではなかったように見えた。エンドロールにも記載なし。わかる人いたら教えて下さい。)

犯行シーンそのものの呆気なさ、
刺された瞬間の男の「熱っ」という反応のリアリティなどディテールの良さを挙げればキリがない。