このレビューはネタバレを含みます
監督は『さがす』の片山慎三さん、脚本は『あのこは貴族』の岨手由貴子さん。
2019年の新宿ホスト殺人事件に着想を得ているそうで、冒頭のシーンはなかなかにエグい。一方で一糸まとわぬ男性(翔くん)にどことなく清らかな潔さも感じた。キャラクターを絞りながら、30分ちょいの短編に巧みにまとめた印象。
紗希の行動を暴走と片づけるのは簡単だけど、「わかってあげられるのは私だけ」の幸せにたどり着いた彼女を思うと決して非難できない。上腕に刻まれた傷も紗希の(求められる喜びを知らなかった)遍歴を物語るのでは。
しかし『さがす』もそうだったんだけど片山慎三監督は視覚的に、あるいは動機的に衝撃性の高い事件をモチーフに(しかもわりと衝撃的な部分の抜粋で)する印象があって、この映画も例にもれないのかなと。
ちなみに紗希の身体や吐息の匂いが画面越しに伝わってくるようで生々しい。翔くんへの愛情がこもった、彼女の体温の発露のように思えた。