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私をくいとめてのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

私をくいとめて(2020年製作の映画)
4.8
快適なおひとりさまライフに慣れ過ぎて、脳内に優秀な(?)相談役“A"(声・中村倫也)が誕生した主人公=みつ子(のん)、31歳。
会社ではちょっと変わり者だけど気の合う先輩のノゾミ(臼田あさみ)に恵まれ、長らく彼氏は不在でも充実のソロ活を無理なくエンジョイ。
居心地のいい自分だけの部屋に帰れば、ムダにいい声のAとの会話に忙しい。何かが足りないのは分かっているけど、決定的に不足しているものもない。そんなみつ子のゆるゆるとした日常に突如舞い降りた、久々の恋!
相手は真面目過ぎるくらい真面目な年下の営業マン=多田くん(林遣都)。
でも20代の頃のようには進まない、大学時代の親友の皐月(橋本愛)の結婚出産など30歳を超えた女のもどかしい現実が立ちはだかり……。おひとりさまヒロイン=みつ子の恋の行方は――?
綿矢りさの同名小説を映画化。
つまらないお茶汲みなどの仕事を自分が優秀でないのが分かりつつ先輩の助けを借りてソツなくこなし、一人焼肉や「フェイクフード作りの教室で作った天ぷらを肴にデパ地下で買った美味しい天ぷらを食す」などおひとりさま活動することを楽しみに、日々やり過ごせていないことを、脳内相談役の「A」と会話して解消しながらおひとりさまライフを満喫中のみつ子。
取引先の会社の営業マンの多田くんと偶然行きつけの惣菜屋で出会い、多田くんが「特別な人」になった瞬間から、おひとりさまライフに満足していたみつ子の心と感情が揺さぶられ変化していく右往左往を、1人焼肉などのソロ活動をみつ子が満喫するトキメキをスローモーションなどを多用して描くおひとりさまライフの楽しさ、会社の先輩でおひとりさま仲間のノゾミとの時に突っかかりかわし合いながらおひとりさまの孤独さや仕事のやるせなさを共有し合うシスターフッド、大学時代の親友の皐月に会いにイタリアに行った時に心の距離を感じて本音をぶつけ合い再び友情を再確認したり、ノゾミから貰った日帰り温泉宿のチケットで日帰り温泉宿を満喫しようとした時に宴会場で女性のピン芸人が酔客にセクハラ的な絡まれ方を見て会社の上司から受けたセクハラなど封印していたトラウマが蘇り心がぐちゃぐちゃになってしまったり、なによりおひとりさまライフが長い者同士のみつ子と多田くんが距離感を不器用に縮める恋模様まで、浮かれたり落ち込んだり現状維持に逃げ込んだりするみつ子と相談役「A」と漫才のような掛け合い、特にみつ子が親友の皐月に自分だけ育った街に取り残された孤独感やイタリアで頑張って生きていることへの劣等感などをぶつけたシーンや温泉宿の宴会場で自分が抑えてきた怒りをぶちまけるシーンなどのみつ子が抑えてきた感情を爆発させる長回しのシーンでは、みつ子の喜怒哀楽をイキイキと表現するのんの天才的な演技が充分生かされた女性の生き方映画の傑作。
「人間なんてみんな、生まれながらのおひとりさまなんだよ。誰かといるためには努力が必要なの」
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