藤井秀剛という監督には確かな作家性がある。
2022年、まだコロナから脱していない日本は、感染区域と対策徹底区域とに区分され、貧富の差がさらに拡大していた。
父の暴力から逃れてきた主人公とその母は公園にブルーシートでテント小屋を作りホームレス同然の暮らしをしていたが…
マスクをしなければならない区域とマスクがいらない対策徹底区域。貧富の差ゆえに万引に手を染める生活困難者。コロナがもたらす人々の分断。
「クソなのは世の中か? ウィルスか? 貧乏か? 俺か? お前か?」
コロナ禍でのチャリティ作品でありながら『狂視』『超擬態人間』で見せた人間の心の闇をえぐるのは藤井秀剛の真骨頂。ホラーではないが、要所要所に画面から伝わる禍々しさは藤井秀剛の世界。『事故物件』とか彼が撮ったらどんな怖いものになるだろう。想像できん。
コロナ禍でもいくつかの映画が作られてきたが、正直「それなり」のモノが多かったと思う。だが、本作は、金がなくても、制約が多くても、いい脚本と情熱があれば、いい映画は作れるというインディーズの原点に立ち帰った作品ではないだろうか。
*コロナで延期されていた藤井秀剛監督最新作『超擬態人間』がついに10月30日に公開が決定しました。ホラーファン、映画秘宝系の方々は必見の規格外のパワームービーです。こちらもオススメ!
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