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パスワード:家のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

パスワード:家(2018年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

大学時代の情報処理グループのメンバーが、それぞれの恋人たちを交えて夕食会を催すために久々に集まった。 リーダー格のラファが、「世界中のハッカーが解読を試みる機密ファイル」の解読に成功したと告白する。そのファイルはスマホ用の拡張現実アプリだった…。

好きな人には刺さる、小品だが新感覚に溢れるSF風味の密室サスペンスの佳作。

結果的に「なかなか面白い」と感じるのだが、前半約45分間がちょっと退屈なのが難点。
集まったメンバーがIT関係の人間なのだが、彼らの最新テクノロジーとかセキュリティについての雑談が延々と続く。
一応本筋に関わってくる内容ではあるものの、さすがに長い。
ITに興味の無い者には辛いだろうし、本作がどういう映画なのか見えないまま、長い雑談に付き合うのは、さすがに疲れる。

しかし、ラファがある機密ファイルを解読して複製したスマホ用の拡張現実アプリを持ち出してから、物語の吸引力が急に強くなる。
なんと、それはスマホの画面を通して30秒後の未来が見えるアプリだった。

30秒先の未来を知ることで何ができるのか?
たった30秒ではギャンブルで稼ぐことも難しい。
しかし、そこに集まった人物はみな頭脳明晰で、何か金儲けに利用できるアイデアはないかと模索し始める。
彼らはそのアプリのプログラムを解析し、変数をいじることによって、30秒以上先の未来を見られないかと試みる。

後半はユニーク且つスリリングな展開に。
未来視できる不思議なアプリを不思議なままで良しとせず、その内部構造にまで踏み込むことによって、それが本当にありそうなモノのように思えてくる。
「プログラムの数値を変えてみようぜ」という発想はリアリティを感じた。

だが、その変数をいじってさらに先を見ることによって、誰も予想していなかった恐ろしい未来が見えてしまう。
辺り一面が火の海に包まれた未来が見える。
それは単なる火事なのか?それともこの世の終わりなのか?
一体、どれくらい先の未来なのか?

ただの夕食会が命を懸けた謎解きスリラーへガラリと変わる。
家から一歩も出ることなく、スマホ一台を通しただけでここまでスリリングな展開ができる脚本に感心した。
低予算映画ならではの発想の勝利だ。

ラストに突然、これは全部ラファが仕組んだドッキリでしたと言い出すが、あまりに手が込みすぎていて、冗談にしてはタチが悪く、素直には受け取りにくい。
仲間がパニックを起こし始めたので、仕方なく誤魔化した様子がありありと伺える。
驚きながらアプリをいじったプログラマーのモニカの反応を考えても、あのアプリは本物だったと考えるのが妥当。
モニカもグルじゃないと成立しなかったドッキリだ。

怪談を一つづつしていき、最後に怖いことが現実に起きる百物語のような感覚。
何気なく使っているインターネットに潜む怖さを感じる作品だ。
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