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ノマドランドのmitoのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.1
2021年31本目。
今年度の賞レースを賑わす社会派作品。
リーマン・ショックの煽りで、消滅した企業のお膝元の町、結果、車上生活を余儀なくされたその街に住んでいた女性のその後と、同じく車上生活をする人々との交流を描く。

社会派とは言いつつ、個人的にはリーマン・ショックによる悲劇的な現実より、彼女らが行うノマド=遊牧民生活から見える人々の哲学が前面に現れる。
彼女の出会う人々も、リーマン・ショックにより一方的に排除されたり、世相の影響で社会の除け者にされたりした訳ではなく、

何かを見つけるために旅をしたり、
はたまた、何かから逃避しようと旅を続けたり、
人それぞれ。

故郷を失い、夫を失い、そんな失われたものがそこにあった、その事実を残すために車上生活を止められない主人公のファーン。
人々は彼女に温かい手を差し伸べる。

そう。
リーマン・ショックという背景があるのに関わらず、この映画は希望を見出す描写が非常に多い。
結末は決して全てが解決した訳ではないが、何かしら前へ歩き出したのは間違いない…少しマンチェスター・バイ・ザ・シーを連想するラストも非常に感慨深い。

実際のノマド生活をしている人々が本人を演じ、自身の心情を語る、舞台設定もこの映画では有効打に感じた。

賞レースを賑わすのも納得の出来。
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