藍住

ノマドランドの藍住のレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.0
社会からすれば枠の外に溢れてしまった人達は放浪しながら今日もどこかで誰かと出逢い、離れて、また出逢う。
その繰り返し。目的地はあるのに自分で止めようと決めない限り終着点がない。
「終わらない」を選ぶことってできるんだと知った。
とても良かったし私は好きな映画だと思ったが、ノマドとして旅をする人生を選ぶこと自体がある意味その人が持つ特権の行使だと思う。
(現に白人が主人公なわけだし)
フランシス・マクドーマンドの周りにいる人達は一部を除いて実際にノマドの人で、ほとんどが白人だったから余計にそう思う。
少なくとも彼らは道端で殺される心配が無いからノマドをやれるので。
自分らしく生きることは素晴らしい。
けれど、自分らしく生きてる彼らが羨ましい。

Amazon倉庫で働く描写があるが、あそこはもう少し批判的な眼差しがあっても良かったかな、と思う。
今作のAmazon倉庫の描写だけを見ると仲良い人同士が楽しく仕事してると捉えられてもおかしくない。
最近Amazonに対して労働者達が賃金上げろって抗議してたニュースを見たが、例えばあの労働者達を後押しするようなことが皆無に見えた。
また、ノマドがどれだけ苦労して生きてきたのかを映画ではなくニュースやインタビューで知ってしまう時点でこの映画には足りない部分がある。
ノマドとして生きる厳しさ、辛さは今作でも十分に伝わるが、それでも映画の中で明確に示すことくらいはして欲しかった。

フランシス・マクドーマンドの演技がとにかく上手すぎてポップコーンを食べる手が普通に止まるので、圧巻の映像美と、美しい音楽と、彼女の演技を存分に浴びて欲しい。
『スリービルボード』でも素晴らしかったが、今作もやっぱり素晴らしかった。
藍住

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