NaoMaru

ノマドランドのNaoMaruのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.5
2021 アカデミー賞
主要3部門受賞!
クロエ・ジャオ 監督作品

アメリカの大地をVANで巡りながら人生を見つめ、仕事を求め、生きてゆくノマド。孤独を噛みしめ、自由を愛する人たちから人間の深みを感じた。死に場所を探しているようにさえ思えた。大地を輝かせる朝焼けや夕映えにうつるファーン(フランシス・マクドーマンド)の孤独な横顔が印象的。心に刺さる傑作。

夫を亡くし、不況で企業が撤退して寂れた街、エンパイア。ファーンは思い出のあり過ぎる街を、愛しながらも出て行く決意をした。夫との記憶と、生活に必要なモノだけを積んでVANで旅立つ。移動中は孤独な時間が襲う。仕事場では仲間ができて平穏な日々を暮す。実姉やデヴィッド(元ノマドの友人)から定住を請われるが、彼女はノマドを選んだ。ノマド生活者には高齢者が多いという。社会保障制度が日本のように充実していない背景もあるのだろう。自らその生き方を選ぶ人もいるし、追い込まれてそうならざるを得ない人もいるようだ。

「ノマド生活者はいつもマタネ!といって、サヨナラはいわない」「実際にまた会える場合があるし、死別してもまた会えると思うから…」と、砂漠の集いの主催者ボブ・ウェルズ。彼が背負う思いはズシーンと伝わる。ただ、見方を少し変えてみると、「一期一会」の流儀で生きていく方法もあるのではないか。また会えるという思いを封印し、私は一回限りのその時、その場の出会いを大切にする生き方に憧れる。孤独ではなく孤高な人物像が浮かびあがる。
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