イスケ

ノマドランドのイスケのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.7
良かった。映像の美しさも特筆すべきもの。

クロエ・ジャオ監督の前作「ザ・ライダー」と雰囲気は近いのだけど、自分自身に重なるも多く、本作の方がより沁みました。


ファーンは終盤のボブとの会話の中に答えのようなものを見つけ、亡き夫の「モノ」を手放すことができ、本当の意味でノマドになれたのだと思いました。

彼女自身、デイブをはじめ多くの友人から「うちにおいで」と声をかけられながらもノマドでいることを選んだわけで、それが今の自分にとって最良だと考えているんでしょうね。

一方で、「ノマドには高齢者が多い」という描写もあった通り、そのレールに「乗らざるを得ない」人も多くいるということは忘れるべきではないのかなと思います。

資本主義に40年ほど貢献した人が高齢になり弾かれてしまう社会。
資本主義という構造の煽りをくらって弾き出されてしまったファーンが、Amazonで働いている時が最も金銭的に安定しているというのは皮肉でしたよね…

ただ、この作品が心を揺さぶるのは、そういった哀しさと同時に、社会構造の奴隷にならずに自分の本能のまま生きるノマドの素晴らしさも含んでいるからなんですよ。

スワンキーのアラスカからのメールなんかは特にそれを感じました。
最後に好きなところに行き、大好きだった石で偲ばれる。最高の終わり方なんじゃないのかな。

ノマドは一括りにはできない。ホームをどこに持っているのか。
ファーンのように心の中にホームを移すことができた人もいれば、デイブのように家族と物質的な家で過ごすことに馴染み、幸せを手に入れた人もいる。

たくさん考えさせられました。
高齢者に差し掛かる頃にふとこの映画のことを思い出しそうだなぁ…
イスケ

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