キャッチ30

ノマドランドのキャッチ30のレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.2
 2008年のリーマンショックによって、家を失いRVでの生活を余儀なくされ、季節労働者になった彼らは「現代のノマド」と言われている。その多くは高齢者だが、彼らはホームレスではなくハウスレスなのだ。

 ファーンもその一人だ。ファーンは企業城下町であるネバダ州エンパイアに住み、代用教員でもあった。夫が亡くなった後も住み続けていたが、不況で町そのものが閉鎖され、全住民が立ち退きになり、ファーンも去ることになる。ファーンは最低限の生活用品と思い出の品をバンに積めて旅に出る。

 ファーンの行先は、エンパイアからアリゾナ、サウスダコタ、カリフォルニアとアメリカを横断する。働き口もアマゾンの配送センターからバッドランズ国立公園やウォールドラッグのレストランと転々とする。彼女はリンダ・メイ、ボブ・ウェルズ、スワンキー、デイヴといったノマドたちと出会い、交流を深めていく。彼らに絶望の表情はなく、希望に満ちている。

 新鋭監督クロエ・ジャオは自然とファーンが一体になるように劇映画とドキュメンタリーの間を溶け合わせる。劇中に出てくるノマドたちは本人であり、デイヴ扮するデヴィッド・ストラザーンの実の息子と孫も登場させている。広大な景色とノマドたちの姿が眼に焼き付く。孤独を抱え、受けの芝居に徹したフランシス・マクドーマンドの佇まいも見事だ。おそらく、ファーンとノマドたちの旅はこれからも続いていくだろう。