このレビューはネタバレを含みます
「家は心の中にある」
アカデミー賞作品賞。そこそこ期待を高くして見ましたが、全く裏切られることはありませんでした。
炭鉱所の閉鎖にともない住み慣れた街を追い出された主人公のファーンはノマド生活を通し様々なバックグラウンドを持つ人々と出会う。
生きる目的を探すには良い場所だ。
砂漠の集いの主催者であるボブの言葉が心に残る。
ノマドにとって出会いと別れは日常茶飯事。
ある者は死を前にして夢を叶えるため、ある者は家族のもとへ戻るため、ある者はまた次なる拠点に向かうため、ヴァンを走らせる。ファーンにとっての生きる目的は何だろう?
妹家族との生活。一時居候したデイブの家族。
夫を亡くしたファーンにとって、彼らとの生活は温かすぎて耐え難いものだった。寝心地の良いベッドを抜け出しヴァンで寝るファーン。家族の温もりを少し羨ましそうにしながら、ひっそりとデイブの家を去るシーンは心が締め付けられました。
映画の終盤、去年と同じような、だが孤独な生活を送っていたファーンはまた砂漠の集いに参加する。
そこで再びボブがある言葉をかける。ノマドは決してさよならとは言わない。いつかどこかでまた会おう。そして実際にそうなる。
ファーンの心の支えである亡き夫ボーが愛したエンパイア。彼女はそこに残してきた社宅の整理を行う。
家財を売り払い、ボーとの「物質的な」繋がりを捨てるシーンで彼女は本作唯一の涙を流す。それでも、決してさよならとは言わない。また必ずボーに会えるから。
お金の価値、物質的な豊さが重視される現代社会の生き方を考えさせられる。決して口数の多い映画ではないけど、非常に多くのものを語りかけてくる良作です。
見終わった後は色々考えすぎて無言になります。
一人で見に行って良かった。(一緒に見に行く相手がいないだけ)