永遠の寂しんぼ

ノマドランドの永遠の寂しんぼのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.3
『自由って、せつなくないですか?』

家や家族を失って社会から切り離されかけても自分を自分たらしめる為に放浪を続ける女性の物語。正直お話は殆ど抑揚が無くてかなり退屈だけどアメリカで広がる貧富の差を知る良いきっかけにはなった。

例えば去年の『パラサイト 半地下の家族』ではタイトル通り半地下で暮らす韓国の貧困層が描かれていたが、今作ではアメリカでリーマンショック以降定職を失った高齢の貧困層のファーンが車上生活を送りながら、季節労働でもって日銭を稼いでいく姿が描かれている。これらはほとんどドキュメンタリー映画に近い感じで、淡々と職や車上生活者たちのキャンプ地を放浪していく姿が描かれていてエンタメ性は皆無。はっきり言って観て面白いとで楽しいとかいう映画ではなく、舞台もアメリカ中部あたり?っぽい荒地みたいな風景や古びた田舎町など、色彩の薄い背景ばかりで映像的な美しさとかもないから、現代のノマド達の生き方から哲学や人生論を感じ取っていくような見方をすべき映画なんだと思う。僕みたいなど素人はともかく金を払ってでもそういう映画の見方のできる人達からはおそらく絶賛されているのだろうし、オスカーとるのも分からなくはないような。

やっぱり印象に残ったのは終盤でのファーンの選択だろうか。なんというか、クラスで一人だけ話せる友達が何かの班に入れてくれたけど、それ以外のメンバーとは話したこともありません、みたいな状況での彼女の選択はなかなか切ない。(べ、別に自分の孤独で暗い青春時代と重ねてしまったわけじゃないから😭) どんな時でも自由というのは何かを捨てたり失うことでしかその対価は得られないのかもしれない。