Pewterspoon

ノマドランドのPewterspoonのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.4
石膏採掘で栄えたネバダ州エンパイアは工場閉鎖とともに企業城下町として成り立っていた町が町ごと消滅してしまう。そんな中、エンパイアで一人で暮らしていた60代の女性ファーンは思い出の品を一台のバンに載せて、あちこちで季節労働をしながら車上生活を送ることにする。


最初は、経済のグローバル化により家族や仕事を失い、無縁状態になって車上生活を余儀なくされている高齢者の話かと思ったが、どうも違う。話が進んでも、ファーンに縁者を頼ったり安住の地を求める様子がないのだ。ということから、序盤でこの映画は、なぜファーンが”Normad”と呼ばれる車上生活をしているか、ということが一つのキーになるということが分かった。

そして、ホームセンターで買い物中に、かつてのエンパイアの住人とファーンが代用教員をしていた時の教え子に会い、困ったことがあったら頼ってくれと言われるが、バツの悪さから断るというベタな展開があり、プライドというか人に頼ることで失われる尊厳の問題に誘導された。アメリカは国柄的に「自助」が重んじられることから、自助の放棄は尊厳に関わる問題なのだろうか、とさえ思った。しかし、これも違う。

ノマド生活を送る中で、ライフラインであるタイヤのパンクや病気というリスクが示され、人間としての尊厳に関わる車上生活中の下の問題も生々しく描かれている。そして映像は荒涼としてはいるもののアメリカ内陸部の大自然はノマド生活の過酷さを際立たせている。そうまでしてファーンがノマドをする謎はどんどん深まっていった。

結末は、①安住の地を見つける、②死亡、③観客を納得させてノマド生活を続行、の3パターンの想像がついた。

さらに、旅の途中に出会った男性から一緒に暮らさないか、と言われたり、家族から一緒に暮らそう、と言われる展開が続く。ここでファーンがノマド生活している理由が見えてくる。本人が進んで安住の地を見つける、という結末は消えはじめ、②に近い形の事故や病気でノマド生活の終了、という結末も見えてくるものの、結末についてはどうでもよくなってしまった。

以下、核心のネタバレ。

ファーンがノマド生活をしているのは、ファーンは一度家族や家を失っており、新たに家族や家を失ってしまうことを恐れているのが最大の理由のようだ。共感はできないが納得の理由。

でも、みんな出会いと別れを乗り越えて生活している。ファーンには中島みゆきの「時代」を聴かせてあげたい。