白瀬青

ノマドランドの白瀬青のレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.8
アメリカのノマドとは、家を捨てて車上生活をする人々のこと。
今作はそのノマドの拠点となるキャンプ地を中心に季節労働のあるところへ車で移動して生活をしている元教職の女性の生活風景と仲間へのインタビューで綴られる、限りなくドキュメンタリー風のロードムービーだ。

ひとくちにノマドと言っても、社会福祉の穴からこぼれ出てほとんどホームレスに近い者から、意識の高い自然派の富裕層までさまざまである。それに従い、持ち得るキャンピングカーや生活用品、熟練度、就労実態も充実度もおのおの違う。
外からの目もそうだ。ホームレスと哀れむ人もいれば、「自分だけ自由に生きて、家庭に縛られる私たちを馬鹿にしているんでしょう」と勝手に嫉妬を見いだして怒り出す人もいる。あまりにも複雑で繊細な現象を貧富あらゆる層のあらゆる角度から描き出しており、その中のひとつのエピソードだけを取りあげて語るにはあまりにも惜しい。ぜひ感想を語るより見てほしい。

ただ、そんなに繊細にあらゆる視点から撮られたアジア人監督の映像の中にほとんど(少なくとも日本人の目から識別できる)有色人種のノマドは出てこない。それもまた現実なのだろう。
白瀬青

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