Ayakashd

ノマドランドのAyakashdのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.4
ドキュメンタリーではないけれど、実際に車上で生活する人たち、そのコミュニティの静かなドキュメントだった。
彼らにとってのモノやhomeのあり方を見つめていると、そもそも「持ち物」や「家,home」の意味ってなんだろう、と思った。ファーンがデイブの家を出て再び路上に戻るシーンで、この人の家は、大地なんだな、この人たちの家はout there でeverywhere で、それはある意味では屋根の下の家よりも豊かなのかもしれない、と思った。一方で限られたモノを大切に使い、そして仲間と交換しあい、その仲間の思い出と共にまた大切に使う。物質主義を回避しようとしている人々が、逆にモノに意味を持たせて慈しむ様子が、意外だったしリアルだった。大量に生産される意味と切り離されたモノはいらない。でも相互扶助の中で巡り巡るモノたちを、大切にする。そんな感じなのかな。
資本主義システムに人生を奪われずに生きようとすること自体は私にとってはそんなに異端でもなんでもなく、まっとうな願いにさえ思えるが、クロエジャオも言っていたように、この世代の人々で、深い喪失を抱えながら、あえて根を下ろさない生き方を選択する人々がいることは新鮮だった。あと、彼ら彼女らが、とはいえAmazonで働いて生計を立て、必要な時には帰れる家を持ち、必要とあらば医療を受けるという事実も、なんだか新鮮だった。強い主義がなければできない暮らしのようにも思えるし、でも、一定はシステムに頼らなければできない暮らしでもあって、それに、本当のどん底の人々には思えなかった。だからこそ、あえてこの生き方を選ぶこの人たちは、理解されにくいだろうなー。と。


映像も綺麗で、厳しさが滲んでいて、ストイックでよかったし、フランシスマクドーマンドさすが。であった。
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