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ノマドランドのyumeayuのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.5
"放浪者"

アカデミー作品賞を含む3部門を受賞。
アメリカ・ネバダ州に暮らす主人公ファーンは、リーマンショックのあおりを受けて、長年住んでいた家を失ってしまう。
彼女は自家用車に家財道具を積み込み、日雇いの職を求めて各地を流浪するノマド(放浪者)として旅にでる。
その道中でファーンは同じ境遇の人々との出会いと別れを繰り返していく…。

原作がノンフィクションということもあって、まるでドキュメンタリーのような作品となっている。そのためか、全体的なストーリーの起伏が乏しく、淡々と物語は進む。
フランシス・マクドーマンドが主人公ファーンを演じているのだが、演技をしている感じがまったくなく、まるで密着ドキュメンタリーのようでファーンその人にしか見えない。

季節労働者として各地を転々としているファーンは、行く先々様々な人と出会うが、その多くは役者ではなく実際のノマドたちなんだとか。
彼らはホームレスではなく、ハウスレスと自らを呼称している。
今作を見る前は、勝手に彼らは社会の底辺であり、現代社会の被害者だと決めつけていたが、実際はそういった人ばかりではなく、必ずしも悲観的な人ばかりではない。

劇中印象的だったのは、車中泊している末期癌の女性の姿。彼女は余命いくばくもないが、思い出の景色を見に行くため、旅を続けたいと話す。
今作に登場する人物のほとんどが決して楽な暮らしをしているわけではないが、それぞれが様々な価値観を持って生活をしている。

正直なところ、退屈な場面も多く決して面白い映画ではない。社会問題を描いてはいるが、観客にそれを押し付けようという感じもない。今作に登場するノマドたちのように、今作の評価は見る人の価値観によって、大きく違ってきそう。

それにしても、今作を撮ったクロエ・ジャオ監督が、この後に全くジャンルの異なる『エターナルズ』を手がけるのだから、映画監督って凄い。
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