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アイダよ、何処へ?の牛猫のネタバレレビュー・内容・結末

アイダよ、何処へ?(2020年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中の1995年、国連で通訳の仕事をする主人公が家族を守ろうとする話。

週初めに観る内容の映画じゃなかったかもしれない。直接的な描写や残虐なシーンがあるわけではないけど、悲しすぎて救いがなさすぎて気持ちが参ってしまった。

スレブレニツァの人々は安全地帯だと信じていたはず。国連の管理下にありながら、最悪の事態を招いてしまったオランダ人指揮官の罪は重いだろう。国連が駐留しているにも関わらず虐殺を止められなかったという構図がルワンダ紛争とも重なる。
世界から見放され、孤独の中で死んでいった人たちは最後に何を思ったのだろうか。

恐ろしかったのはセルビア軍側にアイダの元教え子や息子の同級生が普通に紛れていたこと。数年前まで同じ教室で過ごしていた友達に虐殺されるという状況に言葉も出ない。
地面に膝をつきながら「兄弟どちらか1人だけでも」と必死に乞うアイダの姿と、その横で悲痛な面持ちでいる息子2人の姿が辛すぎる。

1995年って本当につい最近だし、第二次世界大戦で国際社会からあれだけ非難されたホロコーストの悲劇があったにも関わらず、同じようなことを繰り返してしまうなんてやるせなさすぎる。
ボスニア紛争について知らなければいけないと思わされたし、このような虐殺が行われていたという事実に気付けるのも映画の役割の一つだと思った。

映画の中のセルビア軍は悪者として描かれているけど、この争いの背景に何があったのかは分からない。最近セルビア軍のリーダーに有罪判決が下ったそうだけど、それで解決する問題でもないと思う。本質的にはどちらが正しいというのはないと思うけど、戦争だけは何があってもやってはいけないし、二度と同じ悲劇を繰り返さないためにも、それを何度も繰り返し伝えていくしかないと思った。
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