みおこし

私というパズルのみおこしのレビュー・感想・評価

私というパズル(2020年製作の映画)
3.6
アカデミー賞授賞式まで残りわずか!主演女優賞にノミネートされた本作を直前に記録。

ボストンに暮らす女性マーサは臨月を迎え、生まれてくる子供への想いを馳せていた。助産師のサポートによる自宅出産を選び、過酷なお産を乗り越えるが、苦労も虚しく赤ん坊は死産になってしまう...。

今年のオスカー、全体的にヘビーな作品が多い気がする...!短編アニメーションの『愛してると言っておくね』はもちろん、『ノマドランド』『サウンド・オブ・メタル』には胸を締め付けられましたが、本作はそれらよりもさらにキツい題材だった。
理想の幸せを思い描いて子供への思いを膨らませるも、信じられない出来事に打ちひしがれるマーサ。夫のショーンはそんな彼女を献身的に支えますが、ぎこちないやり取りが続き2人の関係にも溝が生じ始めます。
さらにマーサの母エリザベス(なんと往年の名女優エレン・バースティンが出演!)は助産師の過失であると裁判に持ちこみますが、人のせいにしてもマーサの心は救われないので、逆効果。周りのそういう気遣いが逆にマーサを追い込んで、孤独感や後ろめたさを逆に煽ってしまう...というのが切ない限り。 
マーサを演じたヴァネッサ・カービーは、セリフも少ないなか、心にぽっかり穴が開いてしまった女性の心理状態を見事に体現していて素晴らしかったです。とても『ワイスピ』に出ていた女優さんとは思えない別人ぶり(笑)。また、そんな彼女との向き合い方に悩む夫を演じたシャイア・ラブーフも良かったです。

言いようのない苦しみから逃れられない女性の痛みをどこまでもリアルに表現しながら、命懸けの作業である"出産"についても深く考えさせられる1本。自分の体を痛めて新たな命を生み出すこの行為、もしその命を失ってしまったら自分の中の何かも死んでしまう。しかし、その死んでしまった心を再び甦らせることができるのも母その人。深い悲しみから這い上がる女性の強さと再生の物語でした。
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