しん

ミス・マルクスのしんのレビュー・感想・評価

ミス・マルクス(2020年製作の映画)
2.5
かなり皮肉の効いた作品でした。ミス・マルクス自身が著名なアクティビストであり、彼女の公的実践は非常に先進的なものでした。しかし私的実践は公的実践とは異なるものであったことをこの映画は示しています。

結婚の法的拘束力へのこだわり、旦那への献身、使用人たちを使う生活、彼女が忌み嫌っていたものは彼女の周りで彼女を束縛し続けます。この映画はその物悲しさや喜劇性を細やかに皮肉っぽく描いた作品と評価できるでしょう。

しかしそうであるなら、前半が無駄に難解です。難解というのは良い意味ではなく、登場人物や描写が伝わりづらく、観客をおいていってしまった印象です。ここである程度の関係性を観客の頭に植え付けておかないと、後半の内容をしっかり理解させられません。とりわけ工場で運動するマルクスと自分の旦那や出自に不安を感じるマルクスの対比をちゃんと伝えるためには、前半が必須だったはずです。

焦点化した対象やテーマは悪くなかっただけに、描き方がもったいなかった作品でした。
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