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親愛なる同志たちへのlpのレビュー・感想・評価

親愛なる同志たちへ(2020年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭にて鑑賞。

ワールドフォーカス部門にて上映されているヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞したモノクロのロシア映画。
「ヴェネツィアで受賞」と聞くだけでもう観たくなるけれども、題材が「ソ連政府により隠蔽された労働者蜂起」と聞いて、個人的にはさらに期待。TOHOシネマズ六本木の最大のハコであるスクリーン7で観られることもあり、期待して鑑賞!
とても80代の監督が撮ったとは思えない、キレ味が良くて面白い映画でした!

1962年6月のソ連。物価の上昇と給料カットへの労働者階級の不満が高まり、国営の機関車工場でストライキが起こる。このストライキから、事態は大規模なものへと繋がり・・・という話。
事件がソ連政府により隠蔽され、詳細があまり広く知られていないことを踏まえてか、今作は当時の事象を可能な限り再現して盛り込むことに力を入れている印象だ。特に群衆の蜂起が政府の軍事介入により、一気に地獄絵図と化すシーンの迫力などは、娯楽作と比較しても遜色がないレベルで力が入れられている。

史実の再現に重点が置かれている今作ではあるけれど、単なる再現ドラマという訳ではない。
物語の主人公に公務員の女性を据え、彼女の娘がストの参加者という設定を加えることで、政府への忠誠心と娘の安否を気遣う想いとの間で揺れるヒューマンドラマを推進力に、映画は展開していく。ラストには監督の「怒り」が感じ取れる強いメッセージもあり、アンドレイ・コンチャロフスキー監督はまだ現役バリバリという印象を受けた。

まだ映画祭期間中にもう1度上映があり、チケットも余っているようなので、気になる方はぜひ。
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