オンライン試写会にて。
先日観た「息子の面影」に続き、メキシコの無法地帯っぷりを描いたディストピア映画。
分かる人には分かると思うけど、「或る終焉」や「父の秘密」のミシェル・フランコ監督というだけで不穏さしか感じない。
そしてその期待を良くも悪くも裏切らない作品だった。
オープニングからして不安を煽ってくる映像群。
暴動をきっかけに、あっという間に崩壊する秩序と広まるカオス。
革命と言えば聞こえはいいが、そこにあるのは殺戮と暴力と略奪という名の新体制(ニューオーダー)だった。
貧富の差に対する抗議で現体制を崩したとしても、次にその座に座るのが軍事政権ならだいたいろくな結果にならない。
それは歴史が証明している。
欲のためにあっけなく殺されていく人々。
金のために行われる誘拐と拷問。
終わらない地獄。
どこまでも救いのない胸糞映画だった。
この映画、90分を切るので余分な情報はほとんど排除されている。
実際に何が起きているのかは明確に説明もされない。
ラストもちょっと分かりづらくて、同じくオンライン試写会で観たフォロワーさんと話してようやく理解。
そうすると色んな細かい部分が繋がってきてしっくりきた。
この映画が描くディストピアは遠い未来の話ではない。
コロナ禍では個人の自由が簡単に奪われ、ウクライナ侵攻で戦争が現実に起きている今、いつどこで起きてもおかしくない話に思える。