Maririri

建築と時間と妹島和世のMariririのレビュー・感想・評価

建築と時間と妹島和世(2020年製作の映画)
3.1
大阪芸大に新設された学科の校舎を依頼され、その構想から完成までの3年弱を追ったドキュメンタリー。淡々と進むので大きな山場を期待したり、建築過程におけるタネ明かしを深堀するわけではないので「建築」視点だと物足りないかもしれないけど、創作密着物大好きな私にはありがたき時間でした。

今回の依頼はSANAAとしてではないのですが、新国立のコンペの話もちらりとあったり(あの自然と交わるプラン素敵だったよなあ…勝ってたら千駄ヶ谷にあの光景が広がってたかと思うと…)もちろんローザンヌやルーブル・ランスのエピソードもデザインや構造の話で出てきたりします。

ああしたらいいかな、これよかったのかなを現場で直情的に判断しない、簡単でも立体的にして見ていくなど…、創造と数値が混在してるカテゴリーならではのロジックな事を直感と融合して形にしていく道程がとても興味深かったです。

いつもCOMME des GARCONSを着こなし、現場にもロッキンホース並みの厚底靴を履いて颯爽と登場するのがなんともかっこいい。「ギャルソンは鎧みたいなもの」とお話されていたのを拝読した事があるのだが至極納得。私も店長時はほとんど毎日着てた。個性を守り、気持ちを鼓舞していないと耐えられなかった日々にはお守りみたいだったもんな。密着の日々のファッションも建物の完成と同様、季節や時間の移り変わりで変わっていくので楽しかった。

なだらかなカーブを描く屋根から雨が落ちてゆく光景を味わいに来訪してみたい。雨垂れをあんな美しく感じたことなど今までなかったので。
Maririri

Maririri