Jun潤

犬部!のJun潤のレビュー・感想・評価

犬部!(2021年製作の映画)
3.9
2021.07.27

予告を見て気になった案件。
林遣都×中川大志。
北里大学獣医学部に実在したサークル・犬部を題材に映画化。

獣医学部の学生である花井颯太は重度の犬好き。
捨てられた犬や猫を拾っては自分の部屋で新しい飼い主が見つかるまで面倒を見ていた。
そんな彼が友人の柴崎涼介らと共に立ち上げた、生きる動物のためのサークルが犬部。
時が流れ、立ち上げメンバーが大人になりそれぞれの道へ進んだ後、颯太が逮捕されたというニュースが飛び込んできた。
犬や猫、生きる動物のために奮闘する犬部の活動を、過去と現在、それぞれから描き出す。

これは想像以上の良作でした。
今作は思うに、動物を扱っていながらも人間のエゴを描いている作品に思えました。
人間の都合で動物を飼い、手放し、飼い主が見つからなければ処分する、そんな身近なことから、殺処分対象の犬を、獣医師の資格を得るために犠牲にすることも扱っていました。
そして、死んだ妻の忘れ形見だからと世話もできないのに犬を取り戻したり、自分の身体のことも顧みずに世話をした結果、自分の身を危険に晒し、人間がいなくなったら犬や猫も死んだしまうなど、人間の愛や死までも人間のエゴとして描いているような描写に心打たれっぱなしでした。

今作のような作品で印象に残るのは、人間の演技よりもやはり犬や猫の演技ですかね。
どうやって撮影しているのか全くわからないほど、本当に作品に合わせて吠えたり表情を作ったりしているんじゃないかと思わせるような動物たちの演技も見どころでした。
人間と動物が想い合っているような描写があったからこそ、どちらの感情も伝わり、互いが互いのために生きているんだということもわかって、動物を飼ったことがある人にはもちろんのこと、飼ったことがない僕のような人にも刺さる作品だったと思います。

気になったのはキャスティングですかね。
大学生時代も大人時代も同じキャストが演じていたためか、時間の経過や考え方の変化も変わらない強さも描けていなかったように感じました。
ダブルキャストにしてどの時代かわかりやすくなっていれば時系列が頭の中でごっちゃになることもなかったような気がします。

あとは重要そうな専門用語や周囲の支えてくれる人たちの説明が足りなかったことも気になりました。
そこが補完されていればもう少し物語に深みが増していたかもしれません。

しかしキャラの対比はとても良かったです。
一匹も死なせたくないからと、大学の実習に参加せず、自分なりの経験を積んで獣医師の資格を取り、一匹でも多くの命を救うために目の前の犬や猫に向き合う颯太と、
動物愛護センターでの殺処分を無くすため、少数の命を犠牲にして多数の命を救おうとする涼介。
それぞれが違う信念を持っていたからこそ、命に対する責任に押しつぶされた涼介の弱さ、変わることなく何があっても命に向き合い続ける颯太の強さがともに描かれていたと思います。

細かいところですが元猫娘の田中麗奈が出演していたことも個人的推しポイントです。笑
Jun潤

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