上野尾花

アンノウン・バトル 独ソ・ルジェフ東部戦線の上野尾花のレビュー・感想・評価

5.0
第二次大戦の独ソ戦、ルジェフの戦いの一部がテーマの作品。拠点となる村を防衛する、ソ連軍の視点で描かれている。もちろんロシア製。

同戦いはソ連軍の被害が甚大で、英語版のWikipediaには "Rzhev Meat Grinder"(肉挽き機)とまで書かれてるほど。劇中では、拠点となる村を奪取するところから始まるけど、初っ端から火薬と血糊でいっぱい。オープニング10分の迫力はハリウッドにも負けてなかった。

村を奪ってからは、防衛側として塹壕にこもって戦う。この映画、例えば思い出的なシーンみたいな、戦場以外のシーンが全くない。たぶんゼロ。その舞台になる村に掘られた塹壕も、血糊とドロドロでぐちゃぐちゃだし、戦闘が相次ぐから緊張感が尋常ない。

ストーリーがないなんて指摘があるけど、本当に観たのかな?作品の中で最後まで描かれてる、この防衛戦の顛末こそ強烈なストーリーだと思うけど。

あと、登場人物の描写もかなり良かった。新兵、一般兵、下士官、士官がそれぞれの立場できちんと写されてた。戦争映画の士官ってかなり嫌なやつなことが多いし、事実この映画でも悪魔みたいな人間だったけど、そいつなりの苦悩があることが説明されていて、納得がいったし、なまなましく感じた。

戦場そのものを写した映画として、かなりの傑作だと思う。
上野尾花

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