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水俣曼荼羅のMALPASOのレビュー・感想・評価

水俣曼荼羅(2020年製作の映画)
3.7
映画『水俣曼荼羅』

2回休憩をはさみ3部構成の長編ドキュメンタリー。6時間12分。
短く感じると言う人もいるようですが、長いのは長い。しかし、見応えのある凄まじい人々の生き様が記録されていた。
アメリカにはドキュメンタリーの巨匠フレデリック・ワイズマンがいる。日本にはこの人がいる。監督は『ゆきゆきて、神軍』『全身小説家』などの鬼才・原一男が20年かけて製作。

ジョニー・デップの『MINAMATA』だけでは知ることができない被害者の苦労や水俣病の症状、国との訴訟問題などなど、すごく勉強になった。

当時環境大臣に小池百合子と被害者の辛辣な会見で始まるが、そのあとは“水俣”と闘う人たちを明るく映し出す。もちろん語れられるのは、苦しみ苦悩、その闘いなんだけど、原監督の懐への入り具合が、まるでカメラを意識しないかのような人々の表情をとられる。

「第1部 病像論を糾す」
小児性水俣病患者・生駒さん夫婦。差別と闘いながら歩んできた半生。生駒さんにしつこく初夜の話を聞く監督。思わず吹き出した。

国が患者認定制度の基準としてきた「末梢神経説」が否定され、新たに採用されたのが「脳の中枢神経説」。脳が大好きな熊大医学部・浴野教授も孤独な闘い。教授の脳に対する偏愛ぶりに思わず笑ってしまった。ユニクロのビニール袋で脳を持ち歩き、包丁でまな板の上の脳をスライスする様子は何かの料理みたいだった。

「第2部 時の堆積」
90歳を超えても闘い続ける川上さん。

「第3部 悶え神」
胎児性水俣病患者として生まれてきた坂本しのぶさん。その叶わぬ恋を語るなんだけど、坂本さんがこれまで恋した男性を横に座らせ笑いながら語らせる。
水俣で苦しむ人も恋もすればセックスもする。みんなと同じように生きたいんだというメッセージが込められていて、笑顔を見ながらも泣きそうになる。人々の懐に入り込み、雑談のようにインタビューを続ける原監督。悲しみや苦しみを煽るわけでもなく、時に笑いながら話を続ける。

患者運動の最前線に立ちながらも、保身との両面で揺れ動く生駒さん。
長きにわたる闘い、最高裁で勝利した溝口さん
水俣病に関して多くの著作。作家・石牟礼道子さんが“悶え神”とはなにかを語る。

この映画に登場する人たちは、水俣アヴェンジャーズなのだ。

大きな被害を出していることは明らかなのに、一人一人が闘いながら、認定をしてもらわなくてはいけない。しかも長い年月をかけて、生涯を潰しながら。

終盤に出てくる言葉「裁判に勝ったからといって、何も変わりはしない。身体が良くなるわけじゃない。しかし、闘う事で生きがいを見出している」