りっく

ファミリー・クライム –ある家族の過ち–のりっくのレビュー・感想・評価

3.4
2つの事件の裁判が時間軸をズラして描かれるという変則的な法廷ドラマである本作は、事件の全容は観客には提示されず、息子が元妻にレイプした事件に関しては全く描写もなく、家政婦が出産後に赤ん坊を殺した事件に関しては冒頭から合間合間に挿入される意味深なバスルームに続く廊下から映すショットのみ。

善悪のジャッジが観客にはできないように意図的に情報制限がされており、あくまで法廷での証言のみに頼るしかない構成が効いている。どちらの事件も被害者と加害者の存在は明確であり、あとはこれが罪なのかどうかを決めるのみ。証言しか判断材料はなく、観客は裁判官と同じ立場に立つことになる。

その中で本作が面白いのは、家族だからといって息子の肩を持ち続けなければいけないわけではなく、明確に母親の自立、家族というしがらみからの脱出を描いており、実の息子よりもむしろ被害者の家族と関係を再構築していく結末も含めて新鮮な着地も無理ない良作。
りっく

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