よしまる

フレンズ/ポールとミシェルのよしまるのレビュー・感想・評価

4.0
 重いトランクを抱えた、おさげ髪にミニスカートの女の子。お墓参りのちパリの駅に降り立ち、流れ出すエルトンジョンのテーマソング。ここまで約1分。
 クレジットが進み、華奢な身体に似合わないサングラスとくわえタバコの男がプリムスのドアを巧みに解錠して盗み乗る。冒頭のわずか2分で、この映画は絶対に面白いと確信できる画づくりだ。

 お互いに家庭に問題を抱える15と14歳のふたりのイギリス人の男女が、パリの地で出逢って次第に惹かれ合い、駆け落ちし、、という話。

 設定は14だが実年齢は18くらいだった主役のフランス女優アニセー・アルヴィナがとにかく美しい。70年代ファッションを着こなし、年上の男の子を優しく諭し、愛し合う時は激しく求めるという、男なら誰しも惚れてしまう女子、、いや、女性を熱演している。
 いっぽうの男の子は、わがままなお坊ちゃんとしての情けなさと、子供らしいとびきりの笑顔のギャップ、そして物語が進むに連れて別人のように精悍な顔つきに変化するのが見ていてつい嬉しくなってしまう。

 若い時に出会っていればもっといろんなことを感じたかもしれないのだけれど、この歳になってから観ることができて良かったと思う。
 心の機微を表情に浮かばせ、多くを語らずともお互いに通じ合い、時々は衝突も挫折もするけれど、なにより前だけを見つめて突き進むふたりの深い愛情。大人になんかなりたくないというモラトリアムに陥るのではなく、むしろ堕落した大人への絶望が自らを奮い立たせ、したたかに生きる術を身につけたふたりを誰が責めることが出来ようか。

 この映画を非現実的だとか茶番だと言ってしまうのは簡単だ。でもボクは頭ごなしにそんなふうに思うことのできない大人になってしまったし、それで良かったと思う。

 続編が未ソフト化でしかも地雷らしいのだけれど、それでもどうしても観たくなるw