晴れない空の降らない雨

ベイビー・ブローカーの晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
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 冒頭の『パラサイト』オマージュ以外は、韓国が舞台でも概ねいつもの是枝。監督の永遠のテーマである「家族」に関する制度や考え方が日本と大差ない、というのも理由の1つだろう。ただ、いまだに男児により価値があるのは日本と違うかな? 現実がどうかは知らないが、韓国の漫画を読んでいても、その辺りの事情を感じるときはある(『チーズ・イン・ザ・トラップ』とか)。

 お話はやや弛緩気味だが、赤子の買い手を訪ね回るブローカーたちのロードムービーを「明」、それを追いかける女性青少年課のコンビを「暗」として、対比をつくって構造化している。断片的に歌い出すという癖がソン・ガンホとペ・ドゥナの共通項としてあり、2人が構造的に同じ位置にあることをそれとなく示唆する。終盤「あの子を売られることを望んでいたのは私だった」と気づくペ・ドゥナのセリフで、物語の中で赤子を売らないほうに傾いていったソン・ガンホとの対照が完成する。

 ソン・ガンホを中心とするブローカーたちは、旅のなかで仲良くなって疑似家族を形成する。彼らが自らの過去を語るのに対し、ペ・ドゥナの過去と本心は最後まで明示されない。これもはっきりと言われることはないが(自明だから?)、おそらくペ・ドゥナ達の女性青少年課は立場が低いのだろう。そのこともまたペ・ドゥナの苛立ちや焦りを生み出しているようだ、ということが何となく窺える。こういった提示と省略のバランスが是枝的というか、自覚的に日本映画的なところというか。