みかぽん

ヒトラーに盗られたうさぎのみかぽんのレビュー・感想・評価

ヒトラーに盗られたうさぎ(2019年製作の映画)
3.7
人は生まれる場所、時代を選べる訳ではないので、困難な時代を引いてしまった人々は本当に気の毒だ。
とはいえ全てのユダヤ人が収容所に送られた訳ではなく、アンナの両親のように危機を早めに察知し、国を離れた家族も多くいた。

物語の始まりは1933年。ナチ党が政権を掌握して以降、時勢は徐々に戦争へ傾く。その後、破竹の勢いでヨーロッパ を席巻するこの集団から辛うじて生き延びたユダヤ人は、最終的にはヒトラーに降伏せずに戦い抜いたイギリス、ソ連、参戦したアメリカ、あるいは遥か辺境のアフリカ等へ逃がれた人々だ。こうして故郷を旅立った彼らは、留まった人々と大きく運命を分けた(勿論、参戦前の日本にもシベリア鉄道を経由してアメリカを目指す多くのユダヤ人が一時的に滞在しており、その世界規模での散り散りさには言葉を失う)。

移動の度に、彼ら亡命者は物理的にも気持ちの上でも大切にしている何かを一つひとつ、確実に失って行く。
そんな中にあっても、9歳のアンナは置かれた場所で懸命に馴染み、新しい環境に居場所を作る。
例えそれが砂の城のように波へ流され続けても、それを受け入れ、再び果敢に作り始める。
その行為は、どんな状況の中でも生き延びるのだという、子供なりの覚悟でもある。

大好きな人やものに別れを告げて、その先に希望を繋ぎ、新しい環境の中へ又一から立ち向かうその柔軟さ、逞しさが、既にカチコチになっている私の心に沁みまくる。
子供ってホントは大人が考えるより大人。且つ賢いよね…😢。
みかぽん

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