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サラーム・ボンベイ!のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

サラーム・ボンベイ!(1988年製作の映画)
4.5
【踊らぬインド映画の傑作】
インド映画というと、「どうせ歌って踊るんでしょ?」と皮肉交じりに言う人がいる。確かにその通りだ。

沢木耕太郎が『深夜特急』インド編で、インドは貧富の格差が激しく、貧しいインド人は現実逃避の為に豪華絢爛で長く、歌と踊りに満ちた映画を観に映画館へ行くとレポートしていた。

つまり、大衆映画なのだ。だから、歌って踊って何が悪い?と思ったりする。

そんなインド映画にだって踊りがほとんどない作品がある。カンヌ国際映画祭を獲る作品がある。えっサタジット・レイ?いやいや、今回紹介するのは『サラーム・ボンベイ!』だ。如何にも踊りだしそうなタイトルだがこれが全く踊らないのだ。

ボンベイのストリート・チルドレンを徹底的にリサーチし、役者も実際のストリート・チルドレンを起用して描いた社会派ドラマだ。

故郷に帰るため、毎日バイトをして暮らす少年。しかし、ボンベイは無法地帯。おつかいを頼まれ、タバコを買うと、そこら中のホームレスやストリート・チルドレンが全力で奪いにくる。

恐喝、強奪は日常茶飯事。警察だって汚職まみれなので、路上で小便しただけで懲役5年の刑をくらう恐れがあるのだ。

ストリート・チルドレンは銀行口座なんか作れるはずがないので、得た金は隠さないといけない。しかし、すぐさま奪われるので、全く故郷に帰る資金が貯まる兆しが見えない。

平和ボケしまくっている日本に住んでいる私はこの地獄絵図に、生きていける自信ねぇと背筋が凍る。マッドマックスなんか、天国だとさえ思えてくる。

インドに興味ある人必見の映画です。
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