崩れていく。ただ憧れ続けて、ようやく届いたはずだったのに。彼女の願望は狂気のように渦を巻き、不穏な影に付き纏われる。それは呪い?醜さが呼んだ縛りのような運命なのか?彼女はただ求め続ける、自身の肉片を掻きむしるかのように。むしればむしるほど、醜さの残滓はこもり、赤黒い肌が彼女の意識を侵食していた。
今作は韓国産のアニメホラー映画であり、原作は韓国のオムニバス漫画『奇々怪々』の中の一遍を題材としている。自身のルックスに長年コンプレックスを持ってきた女性が、美しい顔を手に入れて人生をやり直そうとする話。のはずが、あれよあれよという間にストーリーは思いも寄らぬ方向へ。あくまで今作がホラー映画である、という点がポイントで、世にも奇妙な物語を韓国テイストで作ったらこうなった、という容赦のないおどろおどろしさがドロドロと沈澱するような余韻を残すことだろう。
〜あらすじ〜
タレント事務所でメイクを担当しているイェジは自分のビジュアルに長年コンプレックスを持っており、性悪の人気タレント、ミリからブサイクと罵られるような日々。そんなイェジはある日、新人タレントのジフンに一目惚れ。しかし、ジフンは当たり前のようにミリとの距離を狭め、イェジには幸せになれるビジョンなど微塵も残されていないように見えた。
それもこれも自分の顔がブサイクなせい、と断じたイェジ。畳みかけるように、テレビ番組での一幕で彼女のコンプレックスが大衆に晒され、ついには部屋に閉じこもり引き篭もり生活に突入してしまう。だが、そんなイェジのもとに整形水なる怪しげな水が届けられる。これを用法を守って使用すれば、見違えるほどの美貌を手に入れることができる、という宣伝文句を信じ、イェジは整形水に顔を浸すと、何と彼女の皮膚から肉が落ち、みるみる美女の顔が覗き始めた。整形水が本物だと実感したイェジは製造元の女性を訪ねることにしたのだが・・。
〜見どころと感想〜
とにかくクライマックスの怖さが突出している作品である。序盤から、この主人公全く好きになれないな、、と思えるくらい主人公の性格がブサイクなので、何が起きてもおかしくはないぞと構えての鑑賞。結果として、こちらが思っている以上にぶっ飛んだ後半部が、今作のホラー要素を最大限にまで引き上げており、このアニメーション映画が韓国産であることを嫌というほど痛感した。結局、救いはどこにあったのか?どこかにあったのかもしれないが非常に見つけづらい作品だった。
アマゾンプライムで鑑賞した場合、吹き替えオンリーだったため、実際のキャストの声は聞けず。その代わり、吹き替えではお馴染みの沢城めぐみを主演に添え、他にも諏訪部順一、日野聡らをキャスティング。基本的に吹き替え版でも違和感はなく、沢城のやや過剰とも取れそうな演出が、今作のホラーテイストとも絶妙にマッチしていたと思う。
主人公にとって本当に美しくないパーツは何だったのか?整形という手段は上塗りのように思えるけれど、逆に今作は削ぎ落としていくことで、最後にシンプルな美醜が豪快に炸裂する作品である。美しさを奪い取っても残るのは空虚な現実だけ。それをまざまざと見せつけられて、ただ呆然とするようなエンドロールが、ゆっくりと落ちていく様を転落するように見つめることしか出来なかった。
〜あとがき〜
レビューにも書いてしまっていますが、後半が強烈です。今作がホラー映画である、という点を前提に見ていただければ、ラストの展開にも心の準備が整えられるのでは、と思いますね。
Filmarksの平均点は高くないですが、個人的には面白く見れました。整形の良し悪しではなくて、もっと別の部分にメスを入れに行った分、ホラーテイストが強くなったかなという気がしましたね。