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アイの歌声を聴かせてのmasayaのレビュー・感想・評価

アイの歌声を聴かせて(2021年製作の映画)
4.1
会話はポンコツ、行動は予測不能、所構わず歌い出す人騒がせな転校生は開発中の人型AIだった!ディズニー名作や近未来SFのニュアンスを借りながら、テクノロジーは人を幸せにするかの問いに踏み込む。終わってしまえば切なくて爽快な新時代のジュブナイルストーリー。
会話する人型AIという設定から、「作為のない天真爛漫さ」を前面に出した土屋太鳳さんの声が映画をのびのびと牽引する。ミュージカルの違和感それ自体が演出。彼女のバックグラウンドが明らかになる終盤以降は、変わらない話し方がギャップとしても効果的だった。
「サカサマのパテマ」の監督なんだ!(知らないで観た)ナチュラルにかなりヘンテコな設定を持ち込みながら、何処か現実の投影を感じることができるというか。独特の作家性をお持ちだ。

11/6 再び観た。
シオン、全然ポンコツじゃなかった!高い自動学習能力を持つ彼女は、周囲の人の善性を映し出し増幅する鏡のような存在になっていった。当然、どこかで悪意が入り込む隙間があればSFホラーになった物語をそうしなかった、作り手の祈りが込められたポジティブな良作だ。
AIとしての彼女も、この物語自体も最後まで幸福でいられたのは、ひとえに環境に恵まれたことと、与えられた命題によって。これってヴァイオレット・エヴァーガーデンがドールの仕事と「あいしてる」探しで成長していったのと同じだなって思った。当然、彼女と物語がランボーの運命を辿る可能性もあったってことだ。
昨日、ヴァイオレットエヴァーガーデンとランボーの運命を比較するツイートを見ていたのでそう思った。
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