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スティックのVのレビュー・感想・評価

スティック(2019年製作の映画)
4.0
フィンランド🇫🇮の短編「KEPPI」
原題は枝でもスティックでもなく「〜へ(行く)」という意味(らしい)。多分「散歩」というニュアンスが近いかもしれない。

上質な短編作品で、心の繊細な部分を捉えるのがとても上手で素晴らしいと思った。大人が理解できない子供の目線/感情の盲点を突いた作品。

- どうしても犬を飼いたいと言う少女、少女の父親は適当にその辺にあった枝を持ち、「この枝を2週間世話をできたら飼ってやる」と約束する。2週間経ち、少女は献身的な枝の世話(散歩)を達成する。その過程で新たな友達ができたり、枝に対する少女の愛着が育まれたことで、少女は本当は自分に犬が必要ではなかったことに気づく。しかし2週間経ったことで約束を果たさねばならないと思い妻に詰められた父親が少女の前で焦燥と怒りに任せ枝を折り捨ててしまう。少女は父親に心を閉ざし大きな溝ができる。もう心を開くことはないのだろう。数ヶ月/数年経ち父親は妻と離婚。次のカットでは犬を約束通り飼ってあげている微笑ましい光景が映されるが、少女は変わらず修復した枝を散歩し続けている…というストーリー。最後通学途中カラカラと引きずる枝のカットが切ない。「帰ったら散歩行くから。」と言いつつも、もう大して犬に関心はないんだろうな。

子供にとっては“そのもの”が手に入るか否かが重要なのではなく、自分が何を愛してるのか、何を大切にしているのかが重要で、大人の浅はかな感覚や基準簡単に切り捨ててはいけないということがよくわかる作品だった。

私も「犬を飼いたい」とこのくらいの年齢で両親に切望して飼ってもらった。それまで犬のぬいぐるみを大切に世話してた。私にとってはあの犬のぬいぐるみが、当時の私にとっては大切な話相手だったから、それが本物の犬であろうとなかろうと、こういう条件付きの課題を出され達成した途端捨てられたとしたらかなり傷つくだろうと思う。

大人と子供の感覚のズレとすれ違い。
表面的な教育ではなく子供の内面の深いところに目を向けて、真剣に繊細に子育てについて考えているのが伝わってくる。
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