なべ

ザ・スイッチのなべのレビュー・感想・評価

ザ・スイッチ(2020年製作の映画)
3.9
 平成生まれの友人に「ザ・スイッチ」観に行く?と誘われた。実は「なにそれ、おもしろいの?」ってくらい全然知らなくて、「ハッピー・デス・デイのクリストファー・ランドン監督の新作だよ」と聞いて行く!と即答した。

 おもしろい!さすがぼくらのブラムハウスだ。何の前情報も持ってなかったから開始早々、13日の金曜日じゃなくて、11日の水曜日とどでかいホラー文字でテロップが出たときは笑った。これから起きる話がどういうものなのか見当つきまくったから。なるほどそういう映画なのね。
 次いでタイトル「Freaky」。違うやん。ザ・スイッチと違うやん!てか邦題からさらにどういう話か見当ついちまった。そう、連続殺人犯と被害者が入れ替わってしまう話。
 ハッピー・デス・デイもそうだったけど、手垢のついたジャンル映画を脱構築して、新しい価値を生み出すってスタイルがいい。
 13日の金曜日なんてクソみたいな映画だけど、あの映画のフォーマットを生かしつつ、こんなにおもしろい話に仕上げる職人気質がもう好き過ぎる。愛してるぜ!
 タイトルの出し方、調子に乗るティーン、マスク、エグ目な殺し方と、かつてのスプラッタームービーのフォーマットを押さえつつ、主客入れ替わることで生まれる小気味いい笑いが新鮮。
 主人公ミリーを支える友人も黒人の女の子とゲイの少年を配してポリコレ遵守。抜かりない。姉が警察官というのもその後の展開が読めるよね。
 ストーリーは他愛無いので、詳しくは述べられないけど、滑稽なのにグッとくるシーンなんかもあり、小品ながら見どころは盛りだくさん。

 クリストファー・ノーランみたく、まったく新しい発想で見たことも聞いたこともない世界を見せてくれるのはそりゃいいけど、トーキー誕生から100年も経てば、新しいものもだんだんつくりづらくなるよね。ハリウッドの深刻な脚本不足が慢性化して久しいが、本作のように旧知のジャンル映画をリビルドするのは、なかなか有効な打開策のひとつなのではないか。クリストファー・ランドンやリー・ワネルなど若手(といってもいいおっさんだが)を中心に、センスのいいリビルドニューウェイブがドドンと押し寄せる日も近いかも。
なべ

なべ