イチロヲ

らせん階段のイチロヲのレビュー・感想・評価

らせん階段(1946年製作の映画)
4.0
大豪邸に預けられ使用人として勤めている唖者の娘が、障害者の女性ばかりを狙う連続殺人事件の標的にされてしまう。口のきけないヒロインの逼迫した精神状態を描いている、サスペンス映画。

家主である紳士が女性問題により弟と不仲になっており、寝たきりの衰弱した義母が不穏な空気を察しながら、唖者のヒロインに屋敷から出るよう忠告する。各カットがまるで絵画のようであり、屋敷内の間取りがしっかり把握できる構図になっている。

「こいつが怪しい」と思われる人物が本当に犯人であり、これまでの行動履歴を懇切丁寧に喋ってくれるところが噴飯ものだが、翻ってみると「唖者を相手にしているので、調子ぶっこいて喋りまくっている」というフォローができなくもない。

周囲の異変に対して、自分の考えを率直に述べることができない苦しみ。窮地に立たされても、助けを呼ぶことができない恐怖。ヒロインへの感情移入がきちんと働くから、「がんばれー!」という応援の気持ちが最後の最後まで持続する。
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