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シングルマンのniのレビュー・感想・評価

シングルマン(2009年製作の映画)
4.9
ジュリアン目当てで観て、そんなに出演時間は長くなかったけれど、彼女の出演作の中でもかなり好きな作品になりました。

トムフォードが監督している時点で期待しかないのですが、普通の作品とは別格でした。ジョージの心情によって画面の彩度が変わり、さらに最初から最後まで、画面の端から端まで全てが計算しつくされているのが伝わってきた。音楽もとても綺麗。出演者が全員美しくて、観ているだけで溜め息が出てきそうなほどの美しさ。

Blu-rayの特典映像のメイキングまで、俳優や監督などスタッフが喋っているシーンは白黒、途中に流れる映画のシーンの部分は元通り、となっていたのはとても驚いた。


美しくて、静かながら、生きることの尊さが痛い程強く伝わってきた。コリンファースの瞳の優しさと、愛する者を失った哀しみと、色気に圧倒された。死とは、生とは一体何なのでしょう。

当時のゲイに向けられる目というか、周りからの反応も描かれていて、ジョージの大親友のチャーリーでさえ、完全に理解しているとは言えないことを言っていたのを見て、当時の時代背景を感じ取った。ネットを見る限り、多くのところで「ゲイ映画」と言われていますが、(上手く言語化出来ないけど)私はゲイについてということがテーマではなく、主人公がゲイであることは設定のひとつに過ぎないように感じた。お話の舞台が60年代、と、今よりももっと同性愛に寛容ではなかった時代のお話なので、主人公がゲイであることはより、主人公を繊細な存在にしていたと思う。

これは多分成長する度に観直すことで、その時その時で感じること、考えることが変わる作品だと思う。だからまた少し時間を置いてこの作品を鑑賞したい。
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