16年来の恋人を事故で失った大学教授, 死を意識して変わる景色を丁寧に, 芸術的に描いた映画. トムフォード監督の卓越した芸術感覚が随所に反映された美しい映画...
回想と現在の時系列配置が工夫されていて面白い. 現在を回想の様に描く事もあればその逆もあり, ジョージの失った過去が如何に大きな物だったかが汲み取れる. 夜に見る回想はあまりに鮮明で, 過去の事とは思えない.
彩度をコントロールする手法はこの作品の大きな特徴で, 初めて使われる秘書の唇のアップでは大変驚いた. その後, "生" "性"を感じさせる物に出逢う度に, ジョージの世界に色彩が蘇るという演出,本当に凄い. スローモーション, 彩度調整, 1秒にも満たないが意味深なカット, これらが全て文学的な役割を果たしていて面白かった.
裸体のスローモーション, 悲壮的な音楽, 印象的な目のアップなどはノクターナルアニマルズに通じるものがあった.
"犬は高等な寄生動物"