さとこ

シングルマンのさとこのネタバレレビュー・内容・結末

シングルマン(2009年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

映像美は期待通り。

恋人を失い今夜死ぬことを心に決めた男の1日。

悲愴感を煽るような演出はない。きっとマイノリティであることもほとんど受け入れきっていて(そこに至るまでに勿論いろいろあっただろうけれど)、それでも、だからこそ、ジムを失った人生を終わらせることを、冷静に決断し、淡々と実行に移そうとしている。

でも、チャーリーの為にお酒を買ったのは。電話に応えたのは。行きつけのバーに行ったのは。ジムのいない人生にも、どこか、なにかないか、最後まで探していたのかもしれない。そして、希望になりうる人物(チャーリーの存在も含まれるとわたしはおもう)に出会って、銃を引き出しにしまい、チャーリーに宛てた遺書を燃やす。

結末は、バッドエンドにも見える。主人公はその瞬間、死にたくないと、思ったかもしれない。でもそのあと、冒頭をなぞるように現れたジムをみて、これはハッピーエンドだ、と思った。

死はどこまでも理不尽だし不可抗力だけど、人生に絶望して自殺をするより、そう悪くないかもと最後に少しだけでも救われたなら、ずっとましなのかも。

最後のキスのシーンは、ともすれば出来過ぎすぎて、白けそうだけれど、最初から最後まで、淡々と、かつ美しい、トムフォードの演出が、成功させてる気がする!
個人的にはノクターナルアニマルズよりずっとすきだな。あと、ジムとの回想シーンもすき。ああいう何気ない会話を、どうしてかずっと覚えてて、時折思い出すの、わかる。主人公にとっては苦しめられる存在かもしらないけど。
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