Rea

シングルマンのReaのレビュー・感想・評価

シングルマン(2009年製作の映画)
4.8
冒頭のカットから一気に鷲掴みにされるほど、完璧過ぎる映像美。最初から最後まで全ての瞬間が美しい。トム・フォードの研ぎ澄まされた美学が潔いほど緊張感を持って貫き通され、また、その世界を体現した俳優陣の演技と佇まいはため息が溢れるほど素晴らしかった。コリン・ファースの真髄がここに。マシュー・グードの魔性さにも感嘆。

どうにもならない喪失と哀しみに、とても丁寧に向かいあっていると思った。チャーリーの確かな友愛と行き場のない想い。ジムとの日々の愛おしさ、優しさ。愛の豊かさを思い出すほど世界が色褪せ、そこに横たわる孤独に身を寄せずには居られないが、そこに差し込む救いの光のような、ポッターの無垢さと共鳴。彼の守りたかったもの、死ぬまで苦しみが続くと思わせる「人生」というものへの、こうして他人が齎してくれるものの大きさと自我、儚さを痛感させられる。

劇中で語られる言葉たちにも、心掴まれます。特に「恐怖」のくだりなど、未だ私たちが注視すべき真理が語られている。

自分の中でそっと大事にしていきたい作品です。
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