ひきこもりにゃんこ

シングルマンのひきこもりにゃんこのレビュー・感想・評価

シングルマン(2009年製作の映画)
4.2
耽美なせつなく美しい映画でした。
ニヒリストな初老のイギリス紳士男性が最愛の人を失った喪失感。
多数派から見たら少数派は恐怖の存在かもしれないが少数派も普通の人間だし普通に生きたいと思っている。
「人生の価値はごく数回他者と心の関係を築けたときだけだ。」
私は女なので「女として生きるのが不幸なら女であることをやめるべきだ」みたいなセリフが刺さりました。かといって男らしく生きろという意味ではない。性別を意識しないで人という生き物として生きろという意味だろう。あんなふうにタバコに火をつけられて私に与えるような仕草を自然とされたら私も永遠に彼を好きになります。
ワンカットワンカット全てのシーンが額に入れて飾れる映画は良作の証
梅林茂のGeorge waltzは素敵な曲で曲を聞けば映画が蘇ります。

以下多少ネタバレあり

死を意識して今日を生きている主人公
隣人の子供達は生に溢れ死というものがまるで別世界の未知なるもので幼いが故に残酷に好奇心から死で遊んでいる。
職場の大学の生徒はマイノリティの同種同士だけの同じ目線で気持ちを感受し相手の変化を見逃さない。
恐ろしいものには恐ろしいなりの美しさがある。と通りがかりに出会った男は言った。
講義で言ったように恐怖の対象であるマイノリティも普通の人間でマイノリティなりの美しさがある。
自分が愛を注ぐ存在は死んでしまったけど自分の変化に気づき愛してくれる(恋愛ではないが)存在がいる(昔恋だった女や大学の生徒)
主人公あなたが最後の日に美しいと感じたものは自然だ。自然であるあなたは必然的に美しい。その美しさを愛する対象の喪失という寂しさによって、自ら搾取しなくて済んで良かった。
普通にあなたの変化に気付いた人と人生の価値を見い出せて生きることの喜びを知りそして天命により普通に死ねて良かった。
死をコントロールしようとして死ぬ日を決めそして生きる希望を見出した時、死はコントロールなんて出来ないよと神に戒められたような死に方だった。