平野レミゼラブル

剣客の平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

剣客(2020年製作の映画)
4.2
【剣よ――娘を守護って、忠義を尽くせ!!】
こーゆーのが観たかった大賞2021受賞!!!!!
いや~ノーマークだったんですが、この潔いタイトルと韓国の本格チャンバラアクションって部分に惹かれ、予告を観たら案の定凄まじい殺陣になっており、今月イチ楽しみにしている『るろうに剣心 最終章』の前哨戦として観てみるか~って軽い気持ちで行ったら、余裕でるろ剣超えが有り得る逸材でした。最高。
予告版の時点で、それこそるろ剣みたいなスライディングチャンバラをやっていて「おぉっ!?」ってなりましたからね!このクオリティの殺陣が全編に渡って展開されていくため、こちらとしては大大大満足。量・質ともに高品質なチャンチャンバラバラ拝めるだけで、値段以上の価値がある。

舞台は17世紀、大陸では明と清とが覇権を巡って争い、朝鮮半島内でもどちらにつくかで権力闘争が勃発した時代。クーデターによって廃帝させられた先の光海君に仕えた最強の剣客テユルが主人公となりますが、この辺りの歴史背景は全く知らなくても問題ありません。なんせ、物語は突き詰めれば「清の悪い奴らに娘が浚われた!闘え!テユル!!」というシンプルさなのですから。

主演のチャン・ヒョクが元々器械体操をやっていたこともあって、身のこなしが軽くてですね、スライディング回避の他、城壁を軽々ひとっ跳びで越えるパルクールアクションめいた動きも見せてくれるのが良いです。
迫りくる清の刺客も中々個性豊かでして、武器が半月状のチャクラムだったり、謎の鈴付き棒(鎖鎌みたいな使い方する)だったり、大ボスに至っては双頭刃(ツーブレーデッドソード)と外連味が溢れすぎているのが最高。刺客全員、見た目通り時代劇にありがちな悪党って感じですけど、武器に個性持たせて差別化を図るだけで結構印象変わりますね。そういえば、ポスターをよく見て頂ければわかるかと思いますが、テユルの剣も先の方が謎に二又です。
この時点で細かいこと考えずに、とりあえず観て楽しもうぜって精神だってのは感じられるかと。

闘いの舞台も室内から竹林に王宮広場、清軍拠点と目まぐるしく変わり、結構ゲーム的な進み方をします。というか、拠点での捕虜奪還アクションに関しては完全に『GHOST OF TSUSHIMA』で蒙古の拠点潰している時そのものです。滅茶苦茶ツシマで何回もやった覚えのある挙動で、敵兵を闇討ちしまくっていて笑った。誉れは朝鮮でも捨てました。
撮影時期的にたまたま似通っただけなんでしょうけど、一足先にツシマの実写版を観た心地で大変お得感があった。

集団戦の白眉はVS火縄銃部隊。銃弾飛び交う中を剣一つで搔い潜り、肉壁を駆使して一人ひとり片付けていくのがカッコいい!スローモーションも駆使して、見事に銃相手に勝つアクションの説得力を魅せてくれていました。
また、ボス戦になると、やはりゲームステージみたいな決闘舞台が用意されてサシで闘うことになるのもツボ。敵の総大将みたいな奴がたった一人で出るかよってツッコミ処は勿論ありながらも、ここまでキッチリ戦う場所をご膳立てされたらその指摘自体が無粋ってもんです。集団戦とボス戦とで場所と場面を分けることで、メリハリにもなっていますしね。

物語はシンプルとは言ったものの、山奥で隠遁していた筈のテユルが娘の為に死闘を繰り広げ続ける流れは、そのまま親子愛の深さにも繋がるためアクション一体型のストーリーと言う方が正しいかもしれない。元々具合の悪かった眼が、激戦に次ぐ激戦の中で異常をきたして視界がボヤけながらも、決して継戦態勢は崩さないのも座頭市的でカッチョイイ。
さらにそこに前王への忠義を絡めてくる為、剣戟以外の見所も意外にある。また、基本的に前王に仕えていた若テユル時代は回想ですが、その中でも若テユルはずっと闘っており、アクション映画としてちっとも停滞しないのも嬉しいところ。

可能な限りストーリーを削ぎ落し、高品質の剣戟に集中させる潔さ。
然れど父娘の絆と、王への忠義という骨子は外さず、短い中に濃縮させた熱い展開。
本当に良い意味で中身が無いというか、必要最低限に面白い部分だけ絞り出した感じなので、終始ニッコニコしながら凄い剣戟アクションを堪能させられるのです。


そんな風に、100の言葉で伝えるより1回見せた方が早い映画ではあり、上映館数がめっちゃ少ないけど、観られる人は是非観て!って感じの作品です。
個人的には去年からこれをずっと求めていたって感覚でして、この感覚はなんだろうと思い返せば、僕が本当に求めていた『狂武蔵』だった。あの作品は坂口拓さんの凄まじい長回しアクションは素直にスゲェーと感嘆しつつも、一番観たい映像はラスト5分くらいでしたからね。本作はそのラスト5分を100分もの間、中弛みさせずにやり切ったワケで、そりゃ面白い。
アクション映画好きな人ならまず損はしないと言い切っちゃいますよ!!

オススメ!!!!